溶接材料の種類・形状と使い方のコツ
まずは、溶接に使う材料の種類や形状と使い方のコツを見ていきましょう。
棒材
棒材とは、中身の詰まった棒状の材料で、角棒・丸棒・異形鉄筋などがあります。
材料としては、しなるので曲げやすく、熱に強い(直火でも使える)、また中空ではないので錆に対する耐久性がある、価格が安いなどの特徴があります。
パイプのように45度、60度など正確にカットしなくても、溶接後に研磨して整えれば形になるので、ビギナーにも使いやすい材料です。用途としては、細くシャープに見せたいもの(シェルフやチェアの脚など)や、火を使うもの(ゴトクや焚き火台など)に向いています。
■丸棒を使ったマガジンラック
パイプ材(鋼管)
パイプ材とは、棒状で中空の材料を言い、角パイプ・丸パイプなどがあります。
軽く、切断・穴あけなどの加工がしやすい、曲がり(しなり)にくいといった特徴があります。一方、細いパイプは肉厚が薄く強度が出にくく、溶接時には材料の角度を合わせてカットする必要があります。
用途としては、頻繁に移動するテーブルやイス、ネジなどを使う可動式、組み立て家具などに向いています。またパイプ内に電線が通せるので、照明器具のアームなどにも適しています。
■角パイプを使ったチェア
■丸パイプに電線を通した電気スタンド
フラットバー(平鋼)
フラットバーは、平らで棒のように長い板をいいます。
曲げ、穴あけなどの加工がしやすく、サイズが豊富なので、あらゆる用途に広く使われます。
■丸棒と曲げたフラットバーを使った傘立て
アングル(山形鋼)・チャンネル(溝形鋼)
アングル、チャンネルはどちらも棒状の鋼材ですが、アングルは断面がL字、チャンネルはコの字型になっています。
アングルは種類も多く強度もあるため、テーブルの天板を受けるフレームなど、板状のものを補強する枠や、テーブルの脚などにもよく使われる材料です。
チャンネルは、溶接DIYよりも建材として使わることが多く、メリットとしては裏から手が入るので、ボルトやナットで裏から固定する箇所(屋根など)でよく使われます。
■アングルを使った脱着式のテーブル脚
平板(鋼板)
平板とは文字通り平らな板で、テーブルや作業台の天板として使われることが多い材料です。一般的に3×6サイズ(910×1,820)など大判で売られているので、小さなサイズが入手しにくい、またプラズマカッターなどがないと正確にカットしにくいという難点があります。
■プラズマカッターによる平板の切断
用途としては天板のほか、折曲げて箱状のもの(薪ストーブなど)や、切文字やサインプレートなどにも多く使われています。
■平板の切文字を使ったサインプレート
エキスパンドメタル・パンチングメタル
平板に類する材料として、エキスパンドメタルやパンチングメタルがあります。
これらの材料は、面を作りながら通気や視界を確保したい場所(フェンスなど)や、階段の踏み板などに使われています。平板より軽く、切断しやすい材料ですが、接点が小さくなる分強度が出にくかったり、溶接時に溶けてしまったりするため難易度はあがります。メッシュの太さや穴の多さ(開口率)を考慮しながら材料を選びましょう。
■エキスパンドメタルを使った照明
■エキスパンドメタル・アングルなどを組み合わせたワゴン
■側面にパンチングメタルを使った焚火台
最後に材料の厚さの選び方です。100Vで溶接できるのは3mmくらいまでですが、1mm以下になると薄すぎて難易度が上がり強度も出にくくなります。初心者の方は、溶接しやすく強度も出る1.6mmくらいの材料を選ぶとよいと思います。
DIYで溶接できる金属素材と溶接法
次に鉄・ステンレスなどの素材のもつ特徴と、適した機材や溶接法などを見ていきましょう。
鉄
鉄は、溶接DIYの材料としてもっともオーソドックスで使いやすい材料です。 一般に販売されている棒材やパイプは「SS400」という素材で、ホームセンターなどで簡単に入手できます。使用する溶接機は、DIY向けの被覆アーク溶接、ノンガス半自動溶接などが使えますので、溶接DIYビギナーの方は、まず鉄からはじめてみるのがよいでしょう。
特徴としては錆びやすいので、溶接後に塗装するのが一般的です。また購入時に錆止めの油が塗布されている場合は、溶接前に脱脂する必要があります。
ステンレス
ステンレスは鉄とクロムの合金で、錆びにくい(stainless)のが最大の特徴です。塗装なしでも美しさを保てるので、車やバイクのマフラーなどに多く使われる素材です。一方、鉄よりも硬いので、切断や穴あけがしにくいという難点もあります。
溶接はガスを使用した「TIG溶接」で行うのが一般的ですが、ガスを使用した半自動溶接、被覆アーク溶接でも可能です。(TIG溶接の方が仕上がりはキレイ)
溶接棒(ワイヤ)は、ステンレス用のものを使う必要がありますが、それほど難易度は高くないのでDIYでも十分に可能です。
アルミニウム
アルミは軽く加工しやすいのですが、ホームセンターなどで販売されているアルミ材は、腐食防止のため表面処理(アルマイト加工)されているので、そのままでは通電せず溶接できません。表面処理されていない材料を購入するか、溶接する前にグラインダーなどで表面を削る必要があります。
アルミの溶接には「TIG溶接」が一般的で、アルミ用の溶接ワイヤを使った、ガスを使用した半自動溶接でも可能ですが、DIYとしてはかなり難易度が高くなります。
その他の素材
その他の素材としては銅、真鍮、鋳物などがあります。銅・真鍮は「TIG溶接」で溶接できますが、かなり難易度は高くなります(上級者向け)。また鋳物はもろく、溶接箇所が割れるリスクがあり、溶接機のパワーも必要です(200V推奨)。
また鉄とステンレスなど異素材同士の溶接は、「異素材用」か「ステンレス用」の溶接棒(ワイヤ)を使えばDIYでも可能です。鉄とアルミの溶接はできません。
素材別 SUZUKIDオススメの溶接機を紹介
それでは素材別にSUZUKIDおすすめの溶接機をご紹介します。
鉄
鉄を使った溶接DIYは、初心者向けのノンガス半自動溶接機、被覆アーク溶接機のいずれも使用可能です。
半自動溶接機
・Buddy80(SBD-80)
100V専用ノンガス半自動溶接機のエントリーモデルで、初心者の方でも比較的簡単にコツがつかめます。純正のノンガスワイヤを使用することでガスを使わずに軟綱・ステンレスの溶接が可能です。
・i-MIGO140(SIG-140)
100V/200V兼用インバータ式半自動ノンガス/ガス【MIG/MAG】兼用。ブレージング/高張力鋼板(最大4.0㎜)まで幅広く対応しています。
溶接ワイヤ
・軟鋼用ノンガスワイヤ(PF-01)
・軟鋼用ソリッドワイヤ(炭酸ガスor混合ガス使用)(PF-22)
被覆アーク溶接機
・Sticky80(STK-80)
超小型&超軽量なビギナーに最適なロープライスモデル。ホットスタート機能で、アークスタートも良好・使用率オーバー防止機能付き。
溶接棒
鉄の溶接には、「低電圧軟鋼用被覆アーク溶接棒 B-1」がおすすめです。赤いパッケージが目印です。
ステンレス
ステンレスを溶接する場合には、アルゴンガスを使用したTIG溶接をおすすめします。
TIG溶接機
・スタルゴン(STG-200D)
100V/200V兼用直流パルスTIG溶接機。シンプルな設定操作でTIG溶接と手棒溶接の両方が使用可能。
半自動溶接機
・Buddy140 カモフラモデル(SBD-140CF)
100V/200V兼用インバータノンガス半自動溶接機。シールドガス不要で軟鋼とステンレスが溶接出来ます。
溶接棒・ワイヤ
ステンレスの溶接には、ステンレス用溶接棒 (パッケージ緑)、またはステンレス用ソリッドワイヤをご使用ください。
・ステンレス用被覆アーク溶接棒(S-1) 100Vの場合は1.4~1.6mm
・ステンレス用ソリッドワイヤ(混合ガス使用)(PF-31)
アルミニウム
アルミの溶接には、アルゴンガスを使用した半自動溶接機をおすすめします。
半自動溶接機
・i-MIGO200(SIG-200)
SUZUKID最上位シリーズ。100V/200V兼用インバータ式半自動ノンガス/ガス【MIG/MAG】兼用。
一台で半自動溶接(ノンガス・ガス)/手棒溶接/TIG溶接 と様々な用途に対応。また、それぞれの作業内容に合わせ最適な溶接条件を自動設定するシナジー機能を搭載。
TIG溶接機
・スタルゴンACDC200(STG-200ACDC)
100V/200V兼用フルデジタルAC/DCパルスTIG溶接機。シンプルな設定操作で簡単にTIG溶接が可能なEZ TIGモード、溶接条件の詳細な設定が可能なPRO TIGモードの2つのTIGモードを搭載。
溶接ワイヤ
・アルミ用ソリッドワイヤ(アルゴンガス使用)(PF-41)
記事監修
SUZUKID(スター電器製造株式会社)
SUZUKIDは創業60年を迎える小型溶接機のパイオニア。
溶接機の販売だけでなく、直営ショップ「Fe★Needs(フェニーズ)」で溶接ワークショップも開催していますので、初心者の方でも安心して購入できます。
SUZUKID公式サイト https://suzukid.co.jp/
直営ショップ「Fe★NEEDS(フェニーズ)」
公式オンラインショップ「スズねっと」
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